金環日食

 朝起きると青空が広がっていた。胸が昂ぶった。日食グラスを買い求めに走ったがどこも売り切れだった。そうだな、今まさに始まろうという時になって、何やってんだろう。
 それにしても異常な朝だった。太陽は山の上の方でまんまると顔を出しているのに、セピア色というかどこか薄暗かった。いつもと違う、日食はもう始まっているのか・・・。強い違和感。こんなの初めてだ。分かっているのに少し胸騒ぎに近いようなものを覚えた。
 朝日がよく見える田んぼの特等席に陣取ったが、田んぼを見渡す限り誰もいなかった。すぐ傍でウグイスがしきりに鳴いていた。小道具が何もなかったから、直接日食を確かめることはできなかった。しかし太陽の前を月が横切っていく様子を十分感じることができた。そして太陽が本来の輝きを取り戻し始めた時、日常はいつものようにやってきた。
 
 太陽が隠されるっていうのは、こんなにも強い違和感を覚えるものなのか、初めて知った。
 そうだ、隣でしきりに鳴いていたウグイスの声が変化するのかどうか聴こうと思ったが、すっかり忘れてしまっていた。
 日中、さんさんと輝く太陽の光を浴びながら、妙に太陽に親しみを感じた。