オリオン座

 連日、夜の中、田んぼを耕起した。トラクターのヘッドライトが一筋の光となって真っ暗な田んぼを照らす。その光を頼りに田んぼの中を行っては戻り行っては戻りする。最後に田んぼの端を2周して終わる。そして次の田んぼへと移る。暗くて静かな田んぼにエンジンの音だけが鳴り響く。先日はトラクターのヘッドライトの先を鹿が走って横切ったが、昨日はとてもとても静かだった。三日月は早々に山に隠れた。ひたすらトラクターに乗り続ける。そうなのだ、雨が降る前に、そう雨が降って本格的な冬が到来すると次の春が来るまで田んぼはもう乾かないかもしれないのだ、だからラストチャンス、今やる必要がある、自然に天気にとことん合わせていくしかない、自分の意見なんて通るはずもない、まあ夜になると疲れて、腹も減る、雨が降るというなら自然に従うしかない、夜の田んぼでただくり返す作業、ヘッドライトの先がスポットライトとなって進行方向を照らす、そこに集中する、ふと見上げると空には一面の星、夜の田んぼの非日常、静かな空だ、幻想的だ、どこかで見た絵画のようだ。南東の空の山の上にオリオン座がくっきり浮かんでいるのを見た。